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「選ばれたのは綾鷹でした」 結局綾鷹は何に選ばれたのか

「選ばれたのは綾鷹でした」

これはコカ・コーラ社が展開するペットボトル飲料綾鷹のキャッチフレーズである。天下の巨大企業コカ・コーラ社が展開する広告だけあって誰もが一度は聞いたことがあると思います。しかし、綾鷹が何になぜ選ばれたのかを理解していない人が大多数だと思われる。そんな綾鷹に隠された恐ろしき販売戦略に迫っていこうと思います。

結局何に選ばれたのか

結論から申し上げると「急須で入れたお茶に最も近いお茶」として選ばれました。多くの人は「最も美味しいお茶」や「最も売れているお茶」と誤解されているのではないでしょうか。この誤解こそがコカ・コーラ社の恐ろしいマーケティング戦略の真髄なのです。極論を言えば他に比べ美味しくなくても選ばれるロジックがありました。

ペットボトル飲料の弱点

ペットボトルのお茶を想像してみて下さい。「お~い お茶」や「生茶」「伊右衛門」を想像した方も多いと思います。日本のペットボトル茶のシェアをこの3種が独占していた時期があります。そしてこれらのお茶には「濁りのない透明な色」という共通点があります。

お茶そのものの弱点として、「時間経過とともに苦味が増す」というものがあります。また苦味が増すのは濁りが原因だと言われております。そのためペットボトルのお茶はいかに濁りをなくすかに焦点をあて、研究開発を行ってきました。なのでトップシェアの3種は濁りのない透明な色になるわけです。

恐るべきマーケティング

急須で入れたお茶には必ず濁りが発生します。一方ペットボトルのお茶は濁りを消しています。急須で淹れたお茶とペットボトルのお茶を決定的に分けているのは濁りといっても過言ではありません。

そこで綾鷹はあえて濁りを加えるように仕上げました。そうすることで急須で入れたお茶に非常に近くなります。濁りを消している従来のお茶と比べれば一目瞭然です。つまりは、あえて濁りを残し急須で入れたお茶に近づけた綾鷹と、あえて濁りを消し急須で入れたお茶から遠ざけた従来のお茶とでは勝負にならないわけです。結局自分の土俵に乗せた綾鷹の勝利でした。

また宣伝の際にあたかもお茶に精通しているような人物を起用したことも挙げられます。お茶の専門家はあまり私達の生活に馴染みがなく、専門家の集まりのため訴えかける力が弱いです。一方で日本料理人や舞妓さん、和職人や歌舞伎芸者などの外国人でもわかるぐらい馴染みがあり、お茶にはうるさい印象があります。このような日本文化の多種多様な人たちが口を揃えて選んだといえば訴えかける力は非常に強力です。

綾鷹登場の影響

このような状況のなかで「選ばれたのは綾鷹でした」といえば誰もが美味しいと思い、多くの人のお墨付きと考えてしまうものです。実際に嘘偽りは一切なく、当然ながら従来のお茶が選ばれるはずもありません。

結果的に綾鷹登場以降大幅にシェアを獲得した上、「濁り茶」という新しいジャンルが各社から登場するようになるなど、綾鷹は非常に大きな影響を与えました。ここまで業界を震撼させた事実は史上まれにみる天才的な広告といっていいでしょう。

今まで何の疑問もなく選ばれたからと考えていた綾鷹でしたが、よく考えれば戦略的にペットボトルのお茶を分析し、それに対し自然に一番良いと思わせる手法は見事という他ないでしょう。これが「一番美味しいのはどれですか」であったならばここまで影響もなく消費者からは疑問の目でみられ、場合によっては法律に引っかかったことでしょう。

たった一つのお茶のたった一つの広告で業界が変わる力を秘めていた実例でした。